ら》の子供《こども》は凧《たこ》なぞも自分《じぶん》で造《つく》りました。
父《とう》さんはまだ幼少《ちひさ》かつたものですから、お家《うち》の爺《ぢい》やに手傳《てつだ》つて貰《もら》ひまして、造作《ざうさ》なく出來《でき》る凧《たこ》を造《つく》りました。紙《かみ》と絲《いと》とはお祖母《ばあ》さんが下《くだ》さる、骨《ほね》の竹《たけ》は裏《うら》の竹籔《たけやぶ》から爺《ぢい》やが切《き》つて來《き》て呉《く》れる、何《なに》もかもお家《うち》にある物《もの》で間《ま》に合《あ》ひました。爺《ぢい》やが青《あを》い竹《たけ》を細《ほそ》く削《けづ》つて呉《く》れますと、それに父《とう》さんが御飯粒《ごはんつぶ》で紙《かみ》を張《は》りつけまして、鯣《するめ》のかたちの凧《たこ》を造《つく》りました。みんなのするやうに、凧《たこ》の尾《を》には矢張《やはり》紙《かみ》を長《なが》く切《き》つてさげました。
末子《すゑこ》は學校《がくかう》の先生《せんせい》[#ルビの「せんせい」は底本では「せうせい」]から手工《しゆこう》を習《なら》ひませう、自分《じぶん》で紙《かみ》の箱《はこ》
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