の方《はう》まで行《ゆ》けば山《やま》の間《あひだ》を流《なが》れて來《く》る谷川《たにがは》がなくもありませんが、人家《じんか》の近《ちか》くにはそれもありませんでした。そこで峠《たうげ》の方《はう》から清水《しみづ》を引《ひ》いて、それを溜《た》める塲所《ばしよ》が造《つく》つてあつたのです。何《なん》といふ好《よ》い清水《しみづ》が長《なが》い樋《とひ》を通《とほ》つて、どん/\流《なが》れて來《き》ましたらう。父《とう》さんが輪《わ》でも廻《まは》しながら遊《あそ》びに行《い》つて見《み》ますと、流《なが》れて來《き》た水《みづ》が大《おほ》きな箱《はこ》の中《なか》に澄《す》んで溜《た》まつて居《ゐ》ます。その水《みづ》が箱《はこ》から溢《あふ》れて村《むら》の下《しも》の方《はう》へ流《なが》れて行《ゆ》きます。天秤棒《てんびんぼう》で兩方《りやうはう》の肩《かた》に手桶《てをけ》をかついだ近所《きんじよ》の女達《をんなたち》がそこへ水汲《みづくみ》に集《あつ》まつて來《き》ます。水《みづ》の不自由《ふじいう》なところに生《うま》れた父《とう》さんは特別《とくべつ》にその清
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