棧橋《かけはし》といふところの休茶屋《やすみぢやや》に飼《か》つてあるお猿《さる》さんが、そんなことを父《とう》さんに尋ね《たづ》ねました。
父《とう》さんは小《ちひ》さな鞄《かばん》を風呂敷包《ふろしきづゝみ》にしまして、それを自分《じぶん》の背中《せなか》に負《しよ》つて居《ゐ》ましたから、
『お猿《さる》さん、これは祖母《おばあ》さんがおせんべつに呉《く》れてよこしたのです。途中《とちう》で退屈《たいくつ》した時《とき》におあがりと言《い》つて、祖母《おばあ》さんが呉《く》れてよこした金米糖《こんぺいたう》です。わたしはこれから東京《とうきやう》へ修業《しうげふ》に行《ゆ》くところですが、この棧橋《かけはし》まで來《く》るうちに、金米糖《こんぺいたう》も大分《だいぶ》すくなくなりました。』
とお猿《さる》さんに話《はな》して聞《き》かせました。
このお猿《さる》さんの飼《か》つてあるところは高《たか》い崖《がけ》の下《した》でした。橋《はし》の下《した》を流《なが》れる木曽川《きそがは》がよく見《み》えて、深《ふか》い山《やま》の中《なか》らしい、景色《けしき》の好《い》いところ
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