染《なじみ》の桐《きり》の木《き》も立《た》つて居《ゐ》ました。その桐《きり》の木《き》は背《せい》こそ高《たか》くても、まだ木《き》の子供《こども》でして、
『いよ/\東京《とうきやう》の方《はう》へ行《ゆ》くんですか。私《わたし》も大《おほ》きくなつてお前《まへ》さんを待《ま》つて居《ゐ》ます。御覽《ごらん》、あそこにはお前《まへ》さんに桑《くは》の實《み》を御馳走《ごちそう》した桑《くは》の木《き》も居《ゐ》ます。お前《まへ》さんのよく登《のぼ》つた柿《かき》の木《き》も居《ゐ》ます。あの土藏《どざう》の横手《よこて》の石垣《いしがき》の間《あひだ》には、土藏《どざう》の番《ばん》をする年《とし》とつた蛇《へび》が居《ゐ》て、今《いま》でも居眠《ゐねむ》りをして居《ゐ》ます。私達《わたしたち》はみんなお前《まへ》さんのお友達《ともだち》です。[#底本では「。」は脱字]私達《わたしたち》をよく覺《おぼ》えて居《ゐ》て下《くだ》さいよ。』
と言《い》ひました。
父《とう》さんはその草履《ざうり》[#ルビの「ざうり」は底本では「ざいり」]で、表庭《おもてには》の門《もん》の内《うち》に
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