》りの大黒屋《だいこくや》の子息《むすこ》さんで、鐵《てつ》さんやお勇《ゆう》さんの兄《にい》さんに當《あた》る人《ひと》でした。この人《ひと》は父《とう》さん達《たち》と違《ちが》ひまして、眼《め》の療治《れうぢ》に東京《とうきやう》まで出掛《でか》[#ルビの「でか」は底本では「でかけ」]けるといふことでした。なにしろ父《とう》さんはまだ九|歳《さい》の少年《せうねん》でしたから、草鞋《わらぢ》をはくといふ事《こと》も出來《でき》ません。そこで爺《ぢい》やが小《ちひ》さな麻裏草履《あさうらざうり》を見《み》つけて來《き》まして、踵《かゞと》の方《はう》に紐《ひも》をつけて呉《く》れました。
父《とう》さんはその新《あたら》しい草履《ざうり》をはいた足《あし》で、お家《うち》の臺所《だいどころ》の外《そと》に遊《あそ》んで居《ゐ》る鷄《にはとり》を見《み》に行《ゆ》きました。大《おほ》きな玉子《たまご》をよく父《とう》さんに御馳走《ごちさう》して呉《く》れた鷄《にはとり》は、
『コツ、コツ、コツ、コツ。』
とお名殘《なごり》を惜《を》しむやうに鳴《な》きました。
その邊《へん》にはお馴
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