知《し》らないお婆《ばあ》さんは見《み》かけによらない優《やさ》しい人でして、學校通《がくかうかよ》ひをする生徒《せいと》がかじかんだ手《て》をして居《ゐ》ましたら、それをお婆《ばあ》さんは自分《じぶん》の手《て》で温《あたゝ》めて呉《く》れました。
『まあ、斯樣《こん》なかじかんだ手《て》をして、よく寒《さむ》くありませんね。そのかはり、お前《まへ》さんが遠路《とほみち》を通《かよ》ふものですから、丈夫《ぢやうぶ》さうに成《な》りましたよ。御覽《ごらん》、お前《まへ》さんの頬《ほゝ》ぺたの色《いろ》の好《よ》くなつて來《き》たこと。』
とさう言《い》ひました。
生徒《せいと》は知《し》らない人《ひと》から斯樣《こん》なことを言《い》はれたものですから、そのお婆《ばあ》さんをよく見《み》ましたら、右《みぎ》の手《て》には山《やま》からでも伐《き》つて來《き》たやうな細《ほそ》い木《き》の杖《つえ》をついて、左《ひだり》の手《て》には籠《かご》を提《さ》げて居《ゐ》ました。籠《かご》の中《なか》には、青々《あを/\》とした蕗《ふき》の蕾《つぼみ》が一ぱい入《はひ》つて居《ゐ》ました。その
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