いて、友《とも》さんや父《とう》さんに分《わ》けて呉《く》れるのを樂《たのし》みにして居《ゐ》ました。ある晩《ばん》、爺《ぢい》やが裏《うら》のお稻荷《いなり》さまの側《わき》から拾《ひろ》つて來《き》た大《おほ》きな栗《くり》を爐《ろ》にくべまして、おいしさうな燒栗《やきぐり》のにほひをさせて居《ゐ》ますと、それを爐邊《ろばた》の板《いた》の上《うへ》で羨《うらや》ましさうに見《み》て居《ゐ》た澁柿《しぶかき》がありました。
『庄吉爺《しやうきちぢい》さん、栗《くり》の澁《しび》が燒《や》けてそんなに香《かう》ばしさうになるものなら、一《ひと》つ私《わたくし》も燒《や》いて見《み》て呉《く》れませんか。』
とその澁柿《しぶかき》が言《い》ひました。
爺《ぢい》やは父《とう》[#ルビの「とう」は底本では「う」]さんの見《み》て居《ゐ》る前《まへ》で、爐邊《ろばた》にある太《ふと》い鐵《てつ》の火箸《ひばし》を取出《とりだ》しました。それで澁柿《しぶかき》に穴《あな》をあけました。栗《くり》を燒《や》くと同《おな》じやうにその澁柿《しぶかき》を爐《ろ》にくべました。そのうちに、※[#「熱
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