物《えもの》を手《て》に入《い》れるのだと聞《き》きました。そして巣《す》を持《も》つて逃《に》げ歸《かへ》るのだと聞《き》きました。どうかすると蘇生《いきかへ》つた蜂《はち》に追《お》はれて刺《さ》されたといふ人《ひと》の話《はなし》も聞《き》きました。さうなると鐵砲《てつぱう》をかついで獸《けもの》を打《う》ちに行《ゆ》くも同《おな》じやうなものです。

   四五 青《あを》い柿《かき》

『もうお前《まへ》さんはそんなに赤《あか》くなつたのですか。』
とまだ青《あを》くて居《ゐ》る柿《かき》が、お隣《とな》りの柿《かき》に言《い》ひました。この青《あを》い柿《かき》と、赤《あか》い柿《かき》とは、お百姓《ひやくしやう》の家《うち》の庭《には》にある二|本《ほん》の柿《かき》の木《き》の枝《えだ》に生《な》つて居《ゐ》ました。
赤《あか》い柿《かき》は青《あを》い柿《かき》を慰《なぐさ》めようと思《おも》ひまして、
『さう、力《ちから》を落《おと》すものでは有《あ》りません。お前《まへ》さんだつても今《いま》に、私《わたし》のやうに好《い》い色《いろ》がつきますよ。』
と言《い》
前へ 次へ
全171ページ中119ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング