をひろげるのもその部屋《へや》でしたし、父《とう》さんが武者繪《むしやゑ》の敷寫《しきうつ》しなどをして遊《あそ》ぶのもその部屋《へや》でしたし、お隣《とな》りのお勇《ゆう》さんが手習《てならひ》に來《き》て祖父《おぢい》さんの書《か》いたお手本《てほん》を習《なら》ふのもその部屋《へや》でした。
お隣《とな》りの鐵《てつ》さんは、父《とう》さんのお家《うち》の友伯父《ともをぢ》さんと同《おな》い年《どし》ぐらゐで、一緒《いつしよ》に遊《あそ》ぶにも父《とう》さんの方《はう》がいくらか弟《おとうと》のやうに思《おも》はれるところが有《あ》りました。近所《きんじよ》の子供《こども》の中《なか》で、遊《あそ》んで氣《き》の置《お》けないのは、問屋《とんや》の三|郎《らう》さんに、お隣《とな》りのお勇《ゆう》さんでした。この人達《ひとたち》は父《とう》さんと同《おな》い年《どし》でした。祖父《おぢい》さんは字《じ》を書《か》くことが好《す》きで、赤《あか》い毛氈《まうせん》の上《うへ》へ大《おほ》きな紙《かみ》をひろげて、夜《よ》遲《おそ》くなるまで何《なに》かよく書《か》きましたが、その度
前へ
次へ
全171ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング