夢に、もるゝはあらじ、あなおろかや。
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ゆきだふれ
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病床にありての作なるからに調《てう》も想《さう》も常にまして整はざるところ多し。讀者の寛恕を乞ふになむ。
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○瘠せにやせたるそのすがた、
枯れにかれたるそのかたち、
何を病みてかさはかれし、
何をなやみて左《さ》はやせし。
○みにくさよ、あはれそのすがた、
いたましや、あはれそのかたち、
いづくの誰れぞ何人《なにびと》ぞ。
里はいづくぞ、どのはてぞ。
○親はあらずや子もあらずや、
妻もあらずや妹《いも》もあらずや、
あはれこの人もの言はず、
ものを言はぬは唖ならむ。
○唖にもあらぬ舌あらば、
いかにたびゞとかたらずや。
いづくの里を迷ひ出《で》て、
いづくの里に行くものぞ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○いづこよりいづこへ迷ふと、
たづぬる人のあはれさよ。
家ありと思ひ里ありと、
定むる人のおろかさよ。
○迷はぬはれを迷ふとは。
迷へる人のあさましさ。
親も兒も妻も妹《いもと》も
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