持たざれば、
闇のうきよにちなみもあらず。
○みにくしと笑ひたまへど、
いたましとあはれみたまへど、
われは形《かたち》のあるじにて、
形《かたち》はわれのまらうどなれ。
○かりのこの世のかりものと、
かたちもすがたも捨てぬとは、
知らずやあはれ、浮世人《うきよびと》、
なさけあらばそこを立去りね。
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○こはめづらしきものごひよ、
唖にはあらでものしりの、
乞食《こつじき》のすがたして來たりけり。
いな乞食《こつじき》の物知顏ぞあはれなる。
○誰れかれと言ひあはしつ、
物をもたらし、つどひしに、
物は乞はずに立去れと、
言ふ顏《つら》にくしものしりこじき。
○里もなく家もなき身にありながら、
里もあり家もある身をのゝしるは、
をこなる心のしれものぞ、
乞食《こつじき》のものしりあはれなり。
○世にも人にもすてられはてし、
恥らふべき身を知るや知らずや、
浮世人とそしらるゝわれらは、
汝《いまし》が友ならず、いざ行かなむ。
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○里の
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