持たざれば、
   闇のうきよにちなみもあらず。
○みにくしと笑ひたまへど、
 いたましとあはれみたまへど、
   われは形《かたち》のあるじにて、
   形《かたち》はわれのまらうどなれ。
○かりのこの世のかりものと、
 かたちもすがたも捨てぬとは、
   知らずやあはれ、浮世人《うきよびと》、
   なさけあらばそこを立去りね。

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○こはめづらしきものごひよ、
 唖にはあらでものしりの、
   乞食《こつじき》のすがたして來たりけり。
   いな乞食《こつじき》の物知顏ぞあはれなる。
○誰れかれと言ひあはしつ、
 物をもたらし、つどひしに、
   物は乞はずに立去れと、
   言ふ顏《つら》にくしものしりこじき。
○里もなく家もなき身にありながら、
 里もあり家もある身をのゝしるは、
   をこなる心のしれものぞ、
   乞食《こつじき》のものしりあはれなり。
○世にも人にもすてられはてし、
   恥らふべき身を知るや知らずや、
   浮世人とそしらるゝわれらは、
   汝《いまし》が友ならず、いざ行かなむ。

   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○里の
前へ 次へ
全23ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング