《ひとよ》はみどりごに、
  琵琶の眞理《まこと》を語り明かさむ。
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  螢


ゆふべの暉《ひかり》をさまりて
 まづ暮れかゝる草陰に
はつかに影を點《しる》せども
 なほ身を愧づる景色あり


羽虫を逐ふて細川の
 棧瀬をはしる若鮎が
靜まる頃やほたる火は
 低く水邊をわたり行く


腐草《ふさう》に生を享《う》けし身の
 月の光に照《てら》されて
もとの草にもかへらずに
 たちまち空《そら》に歸りけり
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  ほたる


ゆふべの暉《ひかり》をさまりて、
  まづ暮れかゝる草陰に、
わづかに影を點《しる》せども、
  なほ身を恥づるけしきあり。


羽虫を逐ふて細川の、
  棧瀬をはしる若鮎が、
靜まる頃やほたる火は、
  低く水邊をわたり行く。


腐草《ふさう》に生をうくる身の、
  かなしや月に照らされて、
もとの草にもかへらずに、
  たちまち空《そら》に消えにけり。
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  蝶のゆくへ


舞ふてゆくへを問ひたまふ、
  心のほどぞうれしけれ、
秋の野面をそこはかと、
  尋ねて迷ふ蝶が身を。


行くもかへるも同じ關、
  
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