はくうん》月を蔽ふなと、
祈るこゝろは君の爲め。
吉野の山の奧深く、
よろづの花に言傳《ことづて》て、
君を待ちつゝ且つ咲かせむ。
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彈琴
悲しとも樂しとも、
浮世を知らぬみどりごの、
いかなればこそ琵琶の手の、
うごくかたをば見凝るらむ。
何を笑むなる、みどりごは、
琵琶彈く人をみまもりて。
何をか囁くみどりごは、
琵琶の音色を聞き澄みて。
浮世を知らぬものさへも、
浮世の外の聲を聞く。
こゝに音づれ來し聲を、
いづこよりとは問ひもせで。
破れし窓に月滿ちて、
埋火かすかになりゆけり、
こよひ一夜《ひとよ》はみどりごに、
琵琶のまことを語りあかさむ。
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彈琴と嬰兒
何を笑《ゑ》むなるみどりごは、
琵琶|彈《ひ》く人をみまもりて。
何をたのしむみどりごは、
琵琶の音色《ねいろ》を聞き澄《す》みて。
浮世を知らぬものさへも、
浮世の外《そと》の聲を聞くなり。
こゝに音づれ來《き》し聲を、
いづくよりとは問ひもせで。
破れし窓に月滿ちて、
埋火《うもれび》かすかになり行けり。
こよひ一夜
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