、
この水底は常世暗《とこよやみ》。
あはれやな、
かしらの角《つの》はとがりまさり、
前額《ひたひ》のしわはいやふかし。
ふたもとの、
はさみはあれどこの恨み、
斷ちきる術《すべ》はなかりけり。
夢なりし、
むかしの榮華は覺めたれど、
いまの現實《まこと》はいつ覺めむ。
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髑髏舞
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某日、地學教會に於て見し幻燈によりて想を構ふ。
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うたゝねのかりのふしどにうまひして
としつき經ぬる暗の中。
枕邊に立ちける石の重さをも
物の數とも思はじな。
月なきもまた花なきも何かあらん、
この墓中《おくつき》の安らかさ。
たもとには落つるしづくを拂ねば、
この身も溶くるしづくなり。
朽つる身ぞこのまゝにこそあるべけれ、
ちなみきれたる浮世の塵。」
めづらしや今宵は松の琴きこゆ、
遠《をち》の水音《みおと》も面白し。
深々《しん/\》と更けわたりたる眞夜中に、
鴉の鳴くはいぶかしや。
何にもあれわが故郷《ふるさと》の光景《ありさま》を
訪はゞいかにと心うごく。
ほられ
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