イフ》との両像に於て進歩したるものなるが故に、「実用」も其の最始に於ては、単に物質的需用を充たすに足りし者が追々に、道義的需用を充たすに至るべき事は当然の順序なり。他の側面より見る時は野蛮人と開化人との区別は、道義性の発達したりしと否とにありといふも、不可なかるべし。爰に於て道義的人生に相渉るべき文学なるものは、人間の道義性を満足せしむるほどのものならざるべからざる事は、認め得べし。之より、
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道義的人生の実用
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とは何ぞやの疑問にうつるべし。
人間を正当なる知識に進ましむるもの(学理[#「学理」に傍点])其一なり、人間を正当なる道念に進ましむるもの(倫理[#「倫理」に傍点])其二なり、人間を正当なる位地に進ましむるもの(美[#「美」に傍点])其三なり。
斯の如く概説し来りたるところを以て、吾人は、快楽と実用との上に於て吾人が詩と称するものゝ地位を瞥見《べつけん》する事を得たり。快楽即ち慰藉は、道義的人生に欠くべからざるものたると共に、実用も亦た道義的人生に欠くべからざるものなる事を見たり。但し慰藉は主として道義的人生に渉る性を有し、実
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