り居るところよりすれば、幾分かは実用[#「実用」に傍点]の性質をも備へてあるなり。(梅桜と東洋文学の関係に就きては他日詳論することあるべし)これと同じく家具家材の実用品と共に或種類の装飾品も亦た、多少実用の性質あるなり。屏風《びやうぶ》は実用品なり、然れども、白紙の屏風といふものを見たる事なきは何ぞや。装飾と実用との相密接するは、之を以て見るべし。之より、
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実用の起原
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に就きて一言すべし。
この問題は至難なるものなり。然れども、極めて雑駁《ざつぱく》に、極めて独断的に之を解けば、前に「快楽」の起原に就きて曰ひたる如く、人間は欲[#「欲」に傍点]の動物なるが故に、その欲[#「欲」に傍点]と調和したる度に於て、自家の満足を得る為に、意と肉とを適宜に満足せしむるが為に、必要とする器物もしくは無形物を願求するの性あること、之れ実用の起原なり。而して人文進歩の度に応じて「実用」も亦進歩するものなる事は、前に言ひたると同じ理法にて明白なり。人文進歩とは、物質的人生《フ※[#小書き片仮名ヒ、1−6−84]ジカル・ライフ》と、道義的人生《モーラル・ラ
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