する運命を同うするなり。「腐朽」わが右にあり、「死淵」わが左にあり、剣を揮《ふる》ふもの誰ぞ、筆を弄《ろう》するもの誰ぞ、天を談ずるもの誰ぞ、地を説くもの誰ぞ、何《いづ》れに進歩あらむ、何れに退歩あらむ。然れども、読者よ請ふ汝の謹厳なる眼を開けよ、宇宙の大精神は一定の塲所に安住せず。造化は終古依然たり、然れども、読者よ請ふ汝の霊活なる心を醒《さま》せよ、造化は其中心に於て、宇宙は其中心に於て、必らず何程かの動あるなり。造化彼れ何物ぞ、宇宙の一表現に過ぎざるなり。宇宙既に動あり、造化|豈《あに》動なからんや。地球の表面は終始依然たり、然れども其の形状は常に変はりつゝあるなり、要は千年の眼を以て、天文台の観測をなすにあり。これ其の外形に就きて言ふのみ、宇宙果して「死物」なるか、将《は》た、又「生躰」なるか、吾人が地球と名《なづ》くる此の一惑星の中に於て此の変動あり、「死躰」にもせよ「生躰」にもせよ、既にこの変動あるなり、何ぞ知らん、人間と称する此二足動物の上に、激雷の驟《には》かに震ふが如く、諸天群がり落ちて、火焔|忽《たちま》ち起りて、一指を投ずるの暇に於て、この終古依然たる天地は、黙示
前へ
次へ
全7ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング