》が故《ゆへ》に、婬賣《いんばい》女に罪《つみ》を行《おこな》ふ資本《しほん》と知《し》りながら、香水料《こうすいりよう》の慈惠《じけい》を爲《な》せしや、何《なん》が故《ゆへ》に少娘《むすめ》を困厄《こんやく》せしめし惡漢《あくかん》をうちひしぐなどの正義《せいぎ》ありて、而《しか》して己《おの》れ自《みづか》ら人《ひと》を殺《ころ》すほどの惡事《あくじ》を爲《な》せしや、何《なん》が故《ゆへ》に極《きは》めて正直《せうじき》なる心《こゝろ》を以《もつ》て、極《きは》めて愛情《あいじよう》にひかさるべき性情《せいじよう》を以《も》て而《しか》して母《はゝ》と妹《いもと》の愛情《あいじよう》を冷笑《れいしよう》するに至《いた》りしや、何《なん》が故《ゆえ》に一|人《にん》の益《えき》なきものを殺《ころ》して多人數《たにんず》を益《えき》する事《こと》を得《え》ば惡《あ》しき事《こと》なしといふ立派《りつぱ》なる理論《りろん》をもちながら流用《りうよう》する事《こと》覺束《おぼつか》なき裝飾品《そうしよくひん》數個《すこ》を奪《うば》ひしのみにして立去《たちさ》るに至《いた》りしか、何《
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