なん》が故《ゆえ》にこの裝飾品《そうしよくひん》を奪《うば》ふは單《たん》に斬取強盜《きりどりごうとう》の所爲《しよい》にして苟《いやし》くも理論《りろん》を搆《かま》へたる大學生《だいがくせい》の爲《な》すべからざるところなるを忘《わす》れしか、是等の凡ての撞着[#「是等の凡ての撞着」に白丸傍点]、是等の凡ての調子はづれ[#「是等の凡ての調子はづれ」に白丸傍点]、是等の凡ての錯亂[#「是等の凡ての錯亂」に白丸傍点]、は即《すなは》ち作者《さくしや》が精神《せいしん》を籠《こ》めて脚色《きやくしよく》したるもの、而《しか》して其《その》殺人罪《さつじんざい》を犯《おか》すに至《いた》りたるも、實《じつ》に是《こ》れ、この錯亂《さくらん》、この調子《てふし》はづれ、この撞着《どうちやく》より起《おこ》りしにあらずんばあらず。而して斯《か》くこの書《しよ》の主人公《しゆじんこう》を働《はたら》かせしものは即ち無形の社會而已なること云を須たず[#「即ち無形の社會而已なること云を須たず」に白丸傍点]。
 運命《うんめい》人間《にんげん》の形《かたち》を刻《きざ》めり、境遇《けふぐう》人間《にん
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