る事《こと》あらば、其《その》惡事《あくじ》例《たと》へば殺人罪《さつじんざい》の如《ごと》き惡事《あくじ》は意味《いみ》もなく、原因《げんいん》も無《な》きものと云《い》ふを得《う》べきや、之《これ》を心理的《しんりてき》に解剖《かいぼう》して仔細《しさい》に其《その》罪惡《ざいあく》の成立《なりたち》に至《いたる》までの道程《みちのり》を描《ゑが》きたる一書《いつしよ》を淺薄《せんはく》なりとして斥《しりぞ》くる事《こと》を得《う》べきや。
殺人罪《さつじんざい》は必《かな》らずしも或見ゆべき原因によりて成立つものにあらざるなり[#「或見ゆべき原因によりて成立つものにあらざるなり」に白丸傍点]、必《かな》らずしも酬報《しゆうほう》の理論《りろん》若《もし》くは勸善懲惡《くわんぜんてふあく》の算法《さんほう》より割出《わりだ》し得《う》るものにあらざるなり、我《わ》が「罪と罰」一|卷《くわん》に見《み》るところのもの全篇《ぜんへん》悉く慘憺たる血くさき殺戮の跡を印するを認むるなり[#「悉く慘憺たる血くさき殺戮の跡を印するを認むるなり」に白丸傍点]、見《み》よ飮酒《いんしゆ》は彼《か
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