《いた》りたる事《こと》ある時《とき》は、彼は酒故に自殺したりと[#「彼は酒故に自殺したりと」に白丸傍点]言《い》ふを躊躇《ちうちよ》せざるべし、酒は即ち自殺の原因なり[#「酒は即ち自殺の原因なり」に白丸傍点]。一|頑漢《ぐわんかん》ありて、社會の制裁と運命の自然なる威力に從順なる事能はず[#「社會の制裁と運命の自然なる威力に從順なる事能はず」に白丸傍点]、これが爲《ため》に人《ひと》には擯《しりぞ》けられ、世《よ》には捨《す》てられ、事業を愚弄し[#「事業を愚弄し」に白丸傍点]、人間をくだらぬもの[#「人間をくだらぬもの」に白丸傍点]とし、階級秩序の如きをうるさきもの[#「階級秩序の如きをうるさきもの」に白丸傍点]とし、誠愛誠實を無益のものと思ひ[#「誠愛誠實を無益のものと思ひ」に白丸傍点]、無暗に人を疑ひ[#「無暗に人を疑ひ」に白丸傍点]、矢鱈に天を恨み[#「矢鱈に天を恨み」に白丸傍点]、その極《きよく》遂《つい》に精神《せいしん》の和《やわらぎ》を破《やぶ》りて行《おこな》ふべからざる事《こと》を行《おこな》ひ自《みづか》ら知《し》らざる程《ほど》の惡事《あくじ》を爲遂《しと》ぐ
前へ 次へ
全14ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング