を作つた。新しい半纏を着た、頭の前だけを一寸のばして油をつけたのが、自轉車で、幔幕を借りてきたり、停車場のある町から色々の道具を運んだりして、やつぱりお祭りらしくとゝのつた。朝のうちから、新らしい着物を着た子供が四、五人、若者が仕度をしてゐる側で遊んでゐた。神社は學校のそばの、野ツ原で、一寸した雜木林で三方だけ圍まれてゐた。晩になれば、ゴム風船などを賣る商人が荷物にした商品を背負つてやつてくることになつてゐるし、法界節屋の連中も停車場のある町から來て、その舞臺で、安來節や手踊りなどをすることになつてゐた。
お文と母親は、お祭りの御馳走をこしらへた。百姓はどんな慘めな暮しをしてゐても、かういふことはしなければならない、さう何時も考へてゐた。
源吉は、焚火をしてゐる大きな爐のわき[#「わき」に傍点]に寢ころびながら、足で、由にいたづらをしてゐた。
「ホラ!」源吉の足にしがみついてゐた由が、一寸すると、ころばされた。
由は、負けまい負けまいと、自分の足に力を入れて突かゝつてくる。が、さうせば、さうするだけ、調子よく、すてん[#「すてん」に傍点]と身體を投げ出された。
「もツと!」
「糞
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