防雪林
小林多喜二

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)冷たい氷雨《ひさめ》が

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)野|面《づら》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)足がふら/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」

×:伏せ字
(例)嬶の××を
−−

[#ページの左右中央]

      北海道に捧ぐ

[#改丁]

      一

 十月の末だつた。
 その日、冷たい氷雨《ひさめ》が石狩のだゞツ廣《ぴろ》い平原に横なぐりに降つてゐた。
 何處《どつち》を見たつて、何んにもなかつた。電信柱の一列がどこまでも續いて行つて、マツチの棒をならべたやうになり、そしてそれが見えなくなつても、まだ平《たひら》であり、何んにも眼に邪魔になるものがなかつた。所々箒のやうに立つてゐるポプラが雨と風をうけて、搖れてゐた。一面に雲
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