ものになつてゐた。百姓達はいくら警察の拷問で、ビク/\してゐると云つても、如何に彼等が自分達を苦しめるものであるか、といふことが、骨の心《しん》までもしみ入つてゐた。それは間違ひなくさうだつた。だから、意志の強いものが、嫌應なしに、グン/\――グン/\その氣持をつツついて行つたら、今度百姓達は自分達の命である畑のことで、極めて不安な立場にも置かれてゐるのだから、又――そして而も前よりはモツト強く立ち上ることが出來る可能性があるやうに思はれた。「幹部」が居なくなつた今、初め源吉は、自分がそれを引きうけて、やつてみようと思つたのだつた。それがうまく[#「うまく」に傍点]行けば、それこそ素晴しいものだつた。さうなれば、源吉は、自分なら、あんなヘマ[#「ヘマ」に傍点]な、そしてあんな生ヌルイ[#「ヌルイ」に傍点]ことはしないぞ、と思つた。氣持は、この前のがきまる時からだつた。地主の家を燒打ちでもして、他人の血で肥つたまるで虱のやうな――いや、「虱そのまゝ」の彼奴等を、なぶり殺してやる!
源吉はそれを――さうならせる迄、然し、待つてゐられなかつた。勿論さうなれば、自分一人でやるよりは、もつとき
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