しか」に傍点]けたつて白状するんだ!」
巡査が云ふのも、何處かやつぱり一皮隔てた處から聞えてくる氣がした。
「大きな圖體しやがつて、この野郎。」
その途端に、源吉の身體がひよいと浮き上つた。「えツ!」氣合だつた。――源吉は床に投げ出されたとき「うむ」と云つた。と見る/\肺が急激に縮まつてゆく、苦しさを感じた。そして、自分の體が床から下へそのまゝ、グツ、グツと沈んでゆくやうに感じて……が、それから分らなくなつてしまつた。
三日間駐在所に置かれて、その暮方、十二、三人が歸つてもいゝ事になつて、表へ出された。幹部のものは札幌へ送られることになつたのでのこつた。
皆は駐在所の角につながれてゐた、空になつた馬橇に背中を圓くして乘ると、出掛けた。なぐられたあとに、寒い風が當ると、ヒリ/\とそこが痛んだ。吹雪いてゐた。町外れに出ると、それが遠慮なく吹きまくつた。皆は外套の上に、むしろ[#「むしろ」に傍点]やゴザ[#「ゴザ」に傍点]をかぶつて、出來るだけ身體を縮めた。一臺、一臺、元氣なく暮方の、だん/\嚴しくなつてゆく寒氣の中を、鈴をならしながら歸つて行つた。誰も、何も云はなかつた。お互はお互
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