分の體が瞬間ゴムマリ[#「ゴムマリ」に傍点]のやうに縮まつたのを感じた。
「貴樣、皆をけしか[#「けしか」に傍点]けたろツ!」
 源吉は反射的に、自分の頬を兩手で抑へた。と、次が來た。鼻がキーンとなると、強い藥でも嗅いだやうに感じて、――……べつたり尻もち[#「もち」に傍点]をついてゐた。眼まひがした。彼は兩手で床に手をついて、自分の身體を支へた。鼻血の生ぬるいのが、床についてゐる手の甲に、落ちてきた。
「この野郎達案外、皆強情だ! 土ん百姓の癖に生意氣しやがると――」
 側に立つてゐた巡査が、さう云ひながら、腰にさしてゐた鞘のまゝの劍をもつて、滅多打ちに、源吉をなぐりつけた。すると、二、三人の巡査もよつてきて、ふんだり、蹴つたりした。――源吉は、「夢中」になつてゐた。それから少し手をゆるめた。
「どうだ?」
 源吉は、自分でも分らなかつたが、どうしたのか、眼蓋が重たくて、はつきり開けることが出來なかつた。そして顏全體に何か粘土でもぬられてゐるやうで、自分の手で抑へても、それがちつとも顏の感覺に來なかつた。何か別なもの[#「もの」に傍点]をつかんでゐるやうだつた。
「皆をけしか[#「け
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