になんか、どうか手荒い事をしないでくれと拜まれたりした。「俺んどこの息子ば、そつたら寄合ひさなんか出さないで、すぐ歸れツて云つてくれ。」と、頭から、どなられたところもあつた。「碌なものにならない。」さういふ處は何んと云つても駄目だつた。それから、皆のする事を危ぶんで、「何んか、別にえゝ[#「えゝ」に傍点]こどでもねえべか。」と云つたり、「失敗《しく》じつたらハ、飯の食ひツぱぢになるべし。」と云はれたりした。
 ところが、その連中のうちの誰かゞ眼をつけてゐる娘の家へ行つて、その娘のゐるところで、いきなり、「碌でなし奴等!」と怒鳴られて、がつかりするものがあつた。又、逆に、そんな娘のゐるところへは、その用事にかこつけて、上り端に腰を下して、別な話を長々して喜んだのもゐた。――そして然し、とにかく、皆ヘト/\になつて、石山の家へ歸つてきた。
 地主の家へ行つた方は、家の中から野良犬でも「たゝき出される」やうに、上り端に腰もかけさせずに、そのまゝ「たゝき出」されて、戻つてきた。
「この野郎共、串だんごみたいに、手前え等ばつきさして、警察に、渡してやるから――今に、食はねえめに會ふな! 役人ばつ
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