から、笑談のやうに、「北海道の宗五郎」といふ奴が、何處かから[#「何處かから」に傍点]一人位は出たつて惡くないだらうさ、と云つた。すると、朴訥な百姓は、眞面目に、考へこんだ。
 差配に掛合つても結局駄目だといふことが分り、そこへもつて行つて差配のとつた傲慢な態度のことから、カツ! とした元氣で、すぐ地主に掛け合ふことに、手はず[#「手はず」に傍点]がきめられてしまつた。校長先生の「北海道の宗五郎」が時機を得て、三人も、その大きな役目を引き受けるものが百姓の中から出た程だつた。
 そこで、それに「幹部」のものが二人加はつて、都合五人で「停車場のある町」の地主の家へ出掛けることになつた。それから殘つた幹部が、百姓二、三人とで、村中の百姓家を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つて、今迄の成行きを話し、愈※[#二の字点、1−2−22]すつかり手を組み合はせて、皆一緒に――一人も地主へ裏切るものがないやうに、どし/\やることにするといふことを云つて歩くことにした。
 その連中は、お婆さんなどにつかまると、くど/\暮しの苦しいことや、自分達の昔からのことなどを口説かれた。そして、「地主樣」
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