縮! 文句云うな。手前一人片付けば、サバ/\するァ!
ハンドルを握っていた職工が上で唾《つば》をひッかける真似をした。
――畜生々々!
下のは大ゲサ[#「ゲサ」に傍点]に横へ跳《は》ねた。
――上から見れア、どいつもこいつも薄汚くゴミ/\してやがる。
――少し高いところさ上ったと思って、可哀相に畜生、すぐブル[#「ブル」に傍点]根性を出しやがる。
――ヘン、だ。手前らを顎《あご》で一度は使っても見たくならァ。
横ボール盤の側に、四五人の職工とパンパン帽をかぶった職長が集って、ワイヤー・プレーを跛《びっこ》に吊したグレーンがガラ/\と寄ってくるのを見ていた。
――オーライ!
渡り職工の職長が手を挙げた。手先きを見ていたハンドルの職工がグイと手元にひいた。グレーンがとまると、ワイヤー・プレーは余勢でゆるく揺れた。その度にチエンが、ギーイ、ギーイときしんだ。周《ま》わりを取巻いていた職工たちが、その揺れの拍子を捕えて、丁度足場の上へ押して行った。
――レッコ、レッコ!
職長は手先きをお出で/\をするように動かした。チエンがギクシャクしながら、延びてきた。エンヤ、コラサ、
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