めに、中性のようになった年増の女工は小金をためているとか、決して他の女工さんの仲間入りをしないとか、顔の綺麗な女工は給料の上りが早いとか、一人の職工に二人の女工さんが惚れたたゝめに、一人が失恋してしまった、ところが失恋した方の女工さんが、他の誰かと結婚すると、早速「水もしたゝる」ような赤い手柄の丸髷《まるまげ》を結って、工場へやって来る、そしてこれ見よとばかりに一廻りして行くとか、日給を上げて貰うために、職長《おやじ》と活動写真を見に行って帰り「そばや」に寄るものがあるとか、社員が女工のお腹を大きくさせて置きながら、その女工が男工にふざけられているところを見付けると、その男と変だろうと、突ッぱねたことがあるとか……。
坂になっていて、降りつくすと波止場近くに出た。凉み客が港の灯の見える桟橋近くで、ブラブラしていた。
――林檎、夏蜜柑、梨子《なし》は如何《いかが》ですか。
道端の物売りがかすれた声で呼んだ。
――林檎喰べたいな。
独言のように云って、お君が寄って行った。
他の女工と同じように、お君も外へ出ると、買い喰いが好きだった。――お君は歩きながら、袂《たもと》で真赤な林
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