反感を見せた。
 ――口惜しいだろう! ――女学生が入ってくると、工場《ここ》のお嬢さん方の眼付が変るから。凄《すご》いて!
 ――眼付きなら、どっちがね!
 ――オイ、あまりいじめるなよ。たまには大学生様[#「大学生様」に傍点]だって参観に来るんだからな。
 何時でもズケ/\と皮肉なことを云う職工だった。
 ――と、どうなるんだ。大学生様と女工さんか。ハ、それア今|流行《はやり》だ!
 ――ネフリュウドフでも来るのを待ってるか……!
「芸術職工」が口を入れた。
 ――女学生の参観のあとは、不思議にお嬢さん方の鼻息がおとなしくなるから、たまにはあった方がいゝんだ。
 年老った職工が聞いていられないという風に云った。
 ――「友食い」はやめろって! キイ公まで黙ってしまった。――何んとか、かんとか云ったって……どんづまりはなア!
 どんづまりは? で、みんなお互気まずく笑い出してしまった。
「Yのフォード[#「Yのフォード」に傍点]」は、その完備した何処へ出しても恥かしくない工場であると云うことを宣伝するために、広告料の要らない広告として、「工場参観」を歓迎していた。「製罐業」を可成りの
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