七
この会合は来るときも、帰るときも必ず連れ立たないことにされていた。森本も鈴木も別々に帰った。
……俺へばりついても、この仕事だけはやって行こうと思ってる。命が的になるかも知れないが……。
前に帰ったものとの間隔を置くために待っていた河田が厚い肩をゆすぶった。
――警察ではこう云ってるそうだ。俺とか君とか鈴木とか、表《おもて》に出てしまった人間なんて、チットも恐ろしくない。これからは顔の知られない奴だって。彼奴《きゃつ》等だって、ちァんと俺たちの運動の方向[#「方向」に傍点]をつかんだ云い方をするよ。だから彼奴等のスパイ政策も変ってきたらしい。特高係とか何んとか、所詮表看板をブラ下げたものに彼奴等自身もあまり重きを置かなくなってきたらしいんだ。
――フうん、やるもんだな。
――合法活動ならイザ知らず、運動が沈んでくれば、そんなスパイの踏みこめるところなど知れたものだ。恐ろしいのは仲間がスパイの時だ。或いは途中でスパイにされたときだ。買収だな。早い話が……。
――オイ/\頼むぜ。
石川がムキな声を出した。
――ハヽヽヽヽ。まアさ、君がこっそり貰
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