ゝを云うのだ。――然しこんなことをY労働組合の誰かに云ったら、夢か、夢を見てるのかと云われそうだ。がこれだけは絶対に今から[#「今から」に傍点]やって行かないと、乞食《こじき》の頭数を集めるように、その場になって、とてもオイそれと出来ることではないんだ。
――僕らはそれをやって行こうと思っているんだ。そのために……。
――俺も失敗《しくじ》ったよ。
石川が云った。
――職場ば離れるんでなかった。な、河田君!
――然しあの頃と云ったら、組合へ必ず出てきて、謄写版を刷って、ビラをまくことしか「運動」と云わなかったもんだ。
――そうなんだ。正直に云って、工場にじっとしていることが、良心的にたまらなかったんだ、あの頃は。
森本は初めて口を入れた。
――然し工場は動き[#「動き」に傍点]づらいと思うんです。大工場になると「監獄部屋」のようなことはしないんですから……。
彼は今日の工場の様子を詳しく話した。河田たちは一つ、一つ注意深くきいていた。
――それはそうだ。
と河田が言った。
――だから今迄何時も工場が後廻わしになってきたのだ。
六
森本は
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