ミであればあるほどいゝのだから……仲々ね。――
 ――それは本当だ。でねえ、僕らが何故口をひらけば「工場の沈んだ組織」と七くどく云うかと云えば、仮りにYのような浮かんだ[#「浮かんだ」に傍点]労働組合を千回作ったとしても、「三・一五」が同様に千回あれば、千回ともペチャンコなのだ。それじゃ革命にも、暴動にも同じく一たまりもないワケだ。話が大きいか。ところが、こうなのだ。最近戦争の危機がせまっていると見えて、官営[#「官営」に傍点]の軍器工場では、この不況にも不拘《かかわらず》、こっそり人をふやしてるらしい。M市のS工場などは三千のところが、五千人になっているそうだ。この場合だ。僕らが、その工場の中に組織を作って行ったとする。それは勿論、表面などに「活発にも」「花々しく」も出すどころか、絶対に秘密にやって行くわけだ。そこへ愈々《いよいよ》戦争になる。その時その組織が動き出すのだ[#「その組織が動き出すのだ」に傍点]。ストライキを起す。――軍器製造反対だ。軍器の製造がピタリととまる。それが例えば大阪のようなところであり、そして一つの工場だけでなかったとしたら、戦争もやんでしまうではないか。こ
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