河田に云われて、「H・S工場」の地図を書いた。河田はその他に、市内の色々な工場の地図を持っていた。それからY市の全図を拡げて「H・S」のところに赤い印をつけた。
 ――水上署とは余程離れてるだろうか。
 ――四……四町位でしょう。
 ――四町ね?
 ――悪いところに立ってるな。
 石川が顔をあげた。
 ――この市《まち》の水上はドウ[#「ドウ」に傍点]猛だからな。
[#H・S工場の地図(fig1466_01.png)入る]
 森本は工場について一通り説明した。――工場Aが製罐部で、罐胴をつくるボデイ・ラインと罐蓋をつくるトップ・ラインに分れている。ボデイの方は、ブリキを切断して、円く胴をつくり、蓋《ふた》をくっツけて締めつけ、それが空気が漏《も》れないか、どうかを調べる。切断機《スリッター》、胴付機《ボデイ・マシン》、罐縁曲機《フレンジャー》、罐巻締機《キャンコ・シーマー》、空気検査機《エアー・テスター》などがその機械で、トップの方は錻力圧搾機《プレス》、波形切断機《スクロール》、と蓋の溝にゴムを巻きつける護謨塗機《ライニング・マシン》がある。――工場Bは、階下はラッカー工場で、罐に漆
前へ 次へ
全139ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング