胸に握り合せ、彼の方を見つめているお君を、人たちの肩越しにチラリと見たと思った……。
二十一
河田がどんなに待っているだろう。あの「二階」で河田は居ても立っても居られないで、待っているだろう。――だが、森本は一体今日のこの素晴しい出来栄えを、どういう風に、どこから話したらいゝか分らなかった。お君も同じだった。
二人は河田に情勢報告をし、専務の返答如何による対策をきめ、すぐ帰って、仲間の家で開かれる細胞集会に出なければならなかった。「二階」に上る前には、必ず二度程家の前を通って、様子を見てからにされていた。――二人は道の反対側の暗いところを通りながら、二階をみた。電燈はついていた。別に人影はなかった。下の洋品店に、顔見知りのおかみさんが帳場に坐りながら、表を見ていた。――ひょいと、こっちが分ったらしく、顔が動いたようだった。
と、おかみさんは眼の前の煙でも払うように、手を振った。それは「駄目々々」という合図らしかった。
――変だな。
立ち止っていることが出来ないので、そのまゝ通り過ぎた。少し行って、又同じところを戻った。四囲《あたり》に注意しなければなら
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