芳に説かれると、五六人が身体を打ッつけ合うように一固りにして、階段を上がった。
 職長たちは事が起ると見ると、事務所の方へ引き上げていたので、一人も邪魔にならなかった。
 食堂には思いがけず、三分の二以上もの職工が押しつまった。然し[#「然し」に傍点]その殆んどが、「会社存亡の問題」という考えから集まっていた。それは誤算すると、飛んでもないことだった。そうでなかったらこのフォードの職工がこれだけ集まる筈がなかった。然しそれをすかさず捉えて、強力なアジ[#「アジ」に傍点]を使って、その方向を引き寄せて来なければならなかった。――
 その時、薄暗い工場の中を影が突ッきって来た。工場の要所々々に立てゝ置いた見張《ピケット》だった。
 ――森君、佐伯あいつ等が盛んに何んか材料倉庫で相談しているよ。それも柔道着一枚で!
 ――佐伯※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
 森本の顔がサッと変った。――暴力で打ッ壊しに来る? それが森本の頭に来た。彼はそんなことになれていなかった。
 ――よし、じゃ仕上場の若手に、こゝに立ってゝ貰おう。――そして愚図々々しないで始めることだ!
 森本は階段を上った。五百
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