ければならないと云った。佐伯たちがその先頭に立った。「H・S危急存亡の秋《とき》、諸君の蹶起を望む!」と、愛社心を煽って歩いた。――彼等はそんなときだけ、職工をだし[#「だし」に傍点]に使うことを考えた。
昼休みに女工たちは、男工の話し込んでいる所をウロ/\した。
――どうなるの?
ときいた。
――男も女も半分首だとよ!
男工がヤケ[#「ヤケ」に傍点]にどなった。
二十
ビラは深い用意から、女工の手によって工場に持ち込まれた。夜業準備のために、女工たちの帰えりが遅くなったとき「脱衣室」の上衣に一枚々々つッこまれた。十人近くの女工がそのために手早く立ち働いた。
朝、森本が工場の入り口で「タイム・レコーダー」を押していると、パンパン帽をかぶった仕上場の職長が、
――大変だぜ!
と云った。
――大変なビラだ。「ニュース」と同じ系統だ。
――へえ。
――今度は全部配られているんだ。何処から入るんかな。こゝの工場も小生意気になったもんだ。 職長は鶴見あたりの工場から流れて来た「渡り職工」だった。皆を「田舎職工」に何が分ると、鼻あしらいしていた。スト
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