えて大声を出して笑った。怪量を取り調べていた役人は同僚と何か相談した。そして、向き直って怪量を睨みつけた。
「売僧、そのような無稽《むけい》な申し立て、此処では通らぬぞ、察するにその方、僧侶の身にあるまじき殺生《せっしょう》を犯した故、死者の妄執《もうしゅう》晴れやらず、それへ止《とど》まっておるに相違あるまい、処《ところ》の法に照らして所刑《しおき》する」
「いや待たれい」
その時まで控席に黙々としていた年老いた役人が進み出た。
「まだ御詮議《ごせんぎ》不充分と見受け申す、一応、首を改めて見ましょうぞ」
老役人は下役人に云いつけて、衣ごと首を手元へ取り寄せて見守っていたが、やがて驚いたように顔をあげた。
「これこそ、まごう方《かた》なき轆轤首、南方異物志《なんぽういぶつし》に、轆轤首の項《うなじ》には赤い文字が見られるとあるが、御覧なされい、これこの通りじゃ、また、離れ口が木の葉の自然と枝から離れたるがごとき模様といい、それに甲斐《かい》の国には、昔から轆轤首がおると申すから、まさしくこれは轆轤首、それなる御僧《ごそう》の申し立ては、いつわりではござらぬぞ」
役人達は、顔を見合
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