ら衣を脱いでさしだした。
 山賊はすぐ衣の首に気が注《つ》いて、その首と怪量の顔を見比べていたが、何と思ったのか飛びしさってひれ伏した。
「仮父《おやぶん》、飛んだ見損ないをいたしました、御勘弁を願います、これこの通りでござります」
 怪量は面白そうに山賊を見た。
「何じゃ、どうしたのじゃ、人を裸にしておいて謝る奴があるか」
「いいえ、めっそうもない」
 山賊は頭を掻《か》いた。
「こんな度胸のいい仮父衆《おやぶんしゅう》を、ただの乞食坊主と間違えて、穴があったら入りたいくらいでござります、それにしても仮父《おやぶん》、人を殺して、衣の袖へその首を付けて脅《おど》しの道具にするたあ、うまい術《て》もあったものだ、どうでしょう、俺のこの着物へ五両つけて仮父《おやぶん》に差しあげますから、首の附いたその衣を俺に譲ってもらいたいものだが」
「なに、首を譲ってくれ、欲しくばやるが、これは人間の首ではないぞ、妖怪《ばけもの》の首じゃぞ、普通の者では扱いかねる代物じゃが、それでよいか」
「人が悪いや、人を殺して、首を袖につけて、そのうえ人をからかうのだもの、それでは仮父《おやぶん》、この通り、五両
前へ 次へ
全13ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング