と着物をさしあげます、冗談《じょうだん》云わないで、早いとここれで手を打ってくだせえまし」
「そうか、それほどまでに所望《しょもう》なら代えてやろうか、じゃが、五両出して妖怪《ばけもの》の首を欲しがる奴は、天下広しといえども貴様だけだろうよ、自由《かって》にせい」
三
首と衣を手に入れた山賊は、暫くその二品《ふたしな》を資手《もとで》に、木曾街道の旅人を劫《おど》していたが、間もなく諏訪《すわ》の近くへ往《い》って首の由来を聞いた。山賊は青くなった。
「やっぱり坊さんの云ったことが真箇《ほんとう》だったのか、飛んでもない、こんな首を持っていたら、どんな祟りを受けるか判らぬ。せめてこれを体と同体《いっしょ》にしてやって、祟りのないようにしてもらおう」
山賊は話に聞いた山の中へ入って、怪量が泊ったと云う轆轤首の家《うち》を探しているうちに、やっと探しあてたが、其処には轆轤首の体は一つもなかった。
「仕様がない、せめて首だけでも此処へ葬ってやれ、それにしても彼《あ》の坊さんは、妙な坊さんだ、ひょっとしたら、あれは、おれに悪事を止めろっていう、仏のお使いかも判らないな」
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