人のやうに眼も開けなかつた。
二人の人影が見えて来た。それは今の女中と魚の眼をした老婆とであつた。それを見ると少年の頬に唇をつけてゐた妹は、すばしこく少年から離れて元の所へ立つてゐた。
「また手数をかけるさうでございますね、顔には似合はない強つくばかりですね、」
老婆は右の手に生きた疣だらけの蟇の両足を掴んでぶらさげてゐた。
「どうも強情つ張りよ、」
妹が老婆を見て云つた。
「なに、この薬を飲ますなら、訳はありません、どれ一つやりませうかね、」
老婆が蟇の両足を左右の手に別別に持つと女中が前へやつて来た。その手にはコツプがあつた。女はそのコツプを老婆の持つた蟇の下へ持つて行つた。
老婆は一声唸るやうな声を出して蟇の足を左右に引いた。蟇の尻尾の所が二つに裂けて、その血が口を伝ふてコツプの中へ滴り落ちたが、それが底へ薄赤く生生しく溜つた。
「お婆さん、もう好いんでしよ、平生くらゐ出来たんですよ、」
コツプを持つた女中はコツプの血を透すやうにして云つた。老婆も上からそれを覗き込んだ。
「どれどれ、ああ、さうだね、それくらゐあれや好いだらう、」
老婆は蟇を足元に投げ捨ててコツプを
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