うです、此所を行つて、突きあたりを左へ折れて行きますと、すぐ、右に曲る所がありますから、其所を曲つて何所までも真直に行けば、電車の終点です、私も電車へ乗るつもりです、」
「どうも有難うございます、この先に私の親類もありますが、この道は、一度も通つたことがありませんから、なんだか変に思ひまして……、では、其所まで御一緒にお願ひ致します、」
譲は足の遅い女と道連れになつては困ると思つたがことはることも出来なかつた。
「行きませう、お出でなさい、」
「すみませんね、」
譲はもう歩き出したがはじめのやうにとつととは歩けない。彼は仕方なしに足を遅くして歩いた。
「道がお悪うございますね、」
女は譲の後に引き添ふて歩きながら何所かしつかりしたところのある言葉で云つた。
「さうですね、悪い道ですね、あなたはどちらからゐらいらしたんです[#「ゐらいらしたんです」はママ]、」
「山の手線の電車で、この先へまでまゐりましたが、市内の電車の方が近いと云ふことでしたから此方へまゐりました。市内の電車では、時々親類へまゐりましたが、この道ははじめてですから、」
「さうですか、なにしろ、場末の方は、早く寝る
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