っかりしたところのある詞《ことば》で云った。
「そうですね、悪い道ですね、あなたはどちらからいらしたのです」
「山の手線の電車で、この前《さき》へまでまいりましたが、市内の電車の方が近いと云うことでしたから、こっちへまいりました、市内の電車では、時どき親類へまいりましたが、この道ははじめてですから」
「そうですか、なにしろ、場末《ばすえ》の方は、早く寝るものですから」
 讓はこう云ってからふと電燈の笠のことを思いだして、あんなことがあったらこの女はどうするだろうと思った。
「ほんとうにお淋しゅうございますのね」
「そうですよ、僕達もなんだか厭《いや》ですから、あなた方は、なおさらそうでしょう」
「ええ、そうですよ、ほんとうに一人でどうしようかと思っていたのですよ、非常に止められましたけれど、病人でとりこんでいる家ですから、それに、泊るなら親類へ往って泊ろうと思いまして、無理に出て来たのですが、そのあたりは、まだ数多《たくさん》起きてた家がありましたが、ここへ来ると、急に世界が変ったようになりました」
 傾斜のある狭い暗い路《みち》が尽きてそれほど広くはないが門燈の多い町が左右に延びてい
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