ので、いたずら心もなくなって、きちんと居《い》ずまいを直して坐っていると、だんだん変って来て故《もと》の着物になった。羅は二人の女がそれを見ていなかったので安心することができた。しばらくして羅は花城と酒のやりとりをすることになった。羅はまた指で花城の掌《てのひら》を掻《か》いた。花城は平気で笑いながら冗談をいってわけを知らないふうであった。羅はびくびくして心配をしていると、着物はもう葉になってしまったが、しばらくしてやっと故のようになった。それから羅は恥かしくなって妄想しなくなった。花城は笑っていった。
「あなたの家の若旦那は、たいへん身持ちがよくありませんね。あなたのようなやきもちやきの奥さんでなければ、どこへ飛んでいくか解らないのですよ。」
 翩翩はまた笑っていった。
「うわき者は、すぐ凍《こご》えて死んでしまうのですよ。」
 二人は一緒に掌《て》をうって笑った。花城は席を起っていった。
「うちの女の子が眼を醒《さま》して、たいへん啼《な》いているのでしょう。」
 翩翩もまた席を起っていった。
「よその家の男を引張ろうと思って、自家の子供の啼くのも忘れていたのでしょ。」
 花城はも
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