旅烏ですから、何人《だれ》も力になってくれる者がないのです、曹邱《そうきゅう》が季布《きふ》をたすけたように」
すると少年が言った。
「私のような馬鹿者でも、おすてにならなければ、あなたのお弟子になりましょう」
孔生はひどく喜んで、
「いや、私は人の師になるほどの者じゃないのです、友達になりましょう」
と言って、それからあらためて訊いた。
「あなたの家は、久しいこと門を閉めているようですが、どうしたわけです」
すると少年が答えた。
「此所は単公子の家ですが、公子が故郷の方へ移ったものですから、久しい間空屋となっていたのです、僕《ぼく》は皇甫《こうほ》姓《せい》の者で、先祖から陝《せん》にいたのですが、今度家が野火に焼けたものですから、ちょっとの間此所を借りて住んでいるのです」
孔生はそこではじめて少年が単の家の者でないことを知った。
日が暮れても二人の話はつきなかった。そこで孔生は泊ることにして少年と榻《ねだい》をともにして寝たが、朝になってまだうす暗いうちに僮子《こぞう》が来て炭火を室の中で熾《た》きだしたので、少年はさきに起きて内寝《いま》へ入ったが、孔生はまだ夜着《よ
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