嬌娜
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)孔雪笠《こうせつりゅう》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)着物一|襲《かさね》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)合※[#「丞/己」、第4水準2−3−54]《ごうきん》
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 孔雪笠《こうせつりゅう》は、孔子の子孫であった。人となりが風流で詩がうまかった。同じ先生に就いて学んでいた気のあった友達があって天台県の令となっていたが、それが手紙をよこして、来いと言ってきたので、はるばる往ったところで、おりもおりその友達の県令が亡くなった。孔生は旅費がないので帰ることもできず、菩陀寺《ぼだじ》という寺へ往って、そこの僧に傭われて書き物をした。
 その寺の西の方四百余歩の所に単《たん》先生という人の邸宅があった。単先生はもと身分のある人の子であったが、大きな訴訟をやって、家がさびれ、家族も寡《すくな》いところから故郷の方へ移ったので、その邸宅は空屋となっていた。
 ある日、大雪が降って
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