。
孔生は一晩泊って帰り、再び妻子を伴れて往った。そこへ嬌娜がまたきたが、嬌娜は松娘の手から小児を取ってあやしながら言った。
「私のお姉さんはね、私達の種をみだしたのよ」
孔生はそこで腫物を癒してもらった礼を言った。すると嬌娜は笑って言った。
「お兄さんは豪《えら》い方ですわ、創口がもう癒ってるのに、まだ痛みをお忘れになりませんの」
嬌娜の夫の呉郎《ごろう》が来てあいさつをした。呉郎は二晩泊ってから帰って往った。
ある日、公子は心配そうな顔をしていたが、孔生に言った。
「天が私達に殃《わざわい》を降そうとしているのです、救うていただけましょうか」
孔生はその意味がわからなかったが、
「どんなことですか、私にはわからないが、私にできることならなんでもやりましょう」
と言ってきっとなった。公子は急いで出て往ったが、すぐ一家の人々を呼んできて、皆で孔生を拝んだ。孔生は大いに駭《おどろ》いて口ばやに問うた。
「どうしたのです、どうしたのです」
すると公子が言った、
「私は人間じゃないのです、狐です、今、雷《かみなり》の劫《ごう》があります、あなたは死を覚悟でそれに当ってください、
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