変ですよ、やっぱり人間じゃありません、疑わずに早く関係を絶つ方がよござんす、あなたは冥途が近いのです」
桑は蓮香のやきもちだと思ったので、黙って何も言わなかった。蓮香は起って言った。
「私はあなたが、あの女の情にひかされているのを知っていますが、それでもあなたを殺すことはできませんから、明日、薬を持ってきて、病気を癒してあげます、まだそれほど病気がひどくないから十日すれば癒ります、私はあなたといっしょにいて、あなたの癒るのを待ちます」
翌晩蓮香は薬を持ってきて桑に飲ました。間もなく桑は腹の中がさっぱりして精神が爽やかになった。桑は心の中で蓮香に感謝したが、しかし鬼病《きびょう》とは思わなかった。蓮香はその夜から桑の榻《ねだい》につきっきりになっていた。
数日の後に桑は体も肥えてきた。そして、桑の体がもとのようになると蓮香は帰って往ったが、別れる時にだめをおした。
「よござんすか、きっと関係を絶つのですよ」
桑は関係を絶つ気はなかったが、めんどうだから、
「いいとも、きっと絶つよ」
と言った。そして、蓮香を送り出して扉を閉め、燈をかきたててかの履を出して弄りながら李のことを思っ
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