ゃないか、こわいよ」
蓮香が言った。
「そうじゃありませんよ、あなたの年恰好なら、三日目には精力が回復しますから、たとい狐であっても害はありません、世の中には癆※[#「やまいだれ+祭」、第3水準1−88−56]《ろうさい》の病気で歿《な》くなる人が多いのです、狐の害ばかりで死ぬるものですか、これはきっと、私のことを譏《そし》ったものがあるでしょ」
桑は力《つと》めて言った。
「そんなものはないよ」
「ないことはありません、言ってください、さあ言ってください」
蓮香がつっかかってくるので、桑もしかたなしに言った。
「実は一人くる者があるがね」
蓮香は言った。
「そうでしょうとも、私はとうからあなたの弱っていらっしゃるのを不思議に思ってました、そんなににわかに体が悪くなったのは、どうしたというのでしょう、どうも人じゃないでしょう、あなたは黙っててくださいね、明日の晩にその人が私を窺いたように、私も窺いてやりますから」
その晩になって李が来て、桑に二語三語話しかけたところ、窓《まど》の外でせきばらいの音がした。すると李は急に逃げて往った。そこへ蓮香が入って来て言った。
「あなた、大
前へ
次へ
全25ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング